最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を従業員に支払わなければならないとする制度です。
8月23日に全国都道府県で地域別最低賃金の引き上げ額が決定されました。
経営者にとって、最低賃金引き上げが企業に与える影響は特に重要でしょう。
今年の最低賃金の状況
8月1日に決定された最低賃金の前年度比上げ幅は31円アップで、過去最高額となりました。
伸び率は全国平均で3.3%、全国平均時給は961円となります。
最低賃金は毎年7~8月頃に改定額が決定され、10月に改定が実施されます。
そのため、全国で実際に賃金の引き上げがおこなわれるのは10月頃となる見込みです。
最低賃金引き上げによる企業への影響
<メリット>
従業員のスキル向上
賃上げがおこなわれれば、従業員のやる気も向上するでしょう。この機会に従業員のスキルを向上させて仕事を効率化させ、賃上げ分も業績を向上させることが期待できます。
生産性を見直す
設備投資、DX化による業務効率化などを進めることで、少ない人数、短い労働時間でも業務が回るように改善できれば、経営全体の健全化にもつながると言えるでしょう。
従業員の労働時間を短縮する
従業員の残業が多い企業では、労働時間を短縮できるように工夫するよいきっかけとなります。
10月の最低賃金発行前に採用する
10月の最低賃金引き上げまでに、どの企業も時給を引き上げるため、採用市場の競争が激しくなります。競合が時給を上げる前に良い人材を確保しておくのがよいでしょう。
<デメリット>
人件費の増加
最低賃金引き上げに伴って従業員への賃金を増加しなければならない場合、人件費は増大します。
場合によっては従業員数や雇用時間の見直しが必要となる可能性もあります。
従業員の確保が難しくなる
人件費の負担が膨らめば、新たな従業員採用にコストを割くことが難しくなる可能性があります。
これまで最低賃金よりもある程度高い賃金を設定していた場合でも、周囲の企業も一律に賃金を上げていけば時給の差別化が難しくなり、従来の賃金では従業員を獲得することが困難になるということも予想されます。
正規社員のモチベーションが低下する
アルバイトやパート社員といった非正規社員のみ賃金を引き上げるという場合、スキル向上や企業への貢献度による賃上げではないため、正規社員にとっては、不平等に感じられる可能性もあるでしょう。
対策のために活用できる助成金
従業員の賃金引き上げを行う事業所を対象にした業務改善助成金
従業員の雇用継続を目的にした雇用調整助成金
有期雇用、短時間労働、派遣などで働く非正規雇用労働者を雇用する企業を対象にキャリアアップ助成金
などがあります。
最低賃金引き上げの影響の対策をするには、従業員数の削減や事業活動の縮小、給付金で現状をしのぐという手段が必要な局面もあるでしょう。それと同時に、環境設備や従業員への教育制度を整え、生産性から根本的に改善していくという視点も重要と言えます。